IN/OUT (2025.8.24)

全く治まる気配の無い猛暑の中、歩いていたら、駅前でTVドラマか何かの撮影をやっていて、迂回を強いられる。で、いささか、ムッとする。以前なら、これだけだったのだが、無意識に「まったく…」と、口から心の声がダダ漏れてしまったことに、老化の進行を感じてしまいました。気を付けねば…(でも、歩行者が気を遣うのが当然という態度は、いただけない)。


in最近のIN

”Land of Bad”25.8.21

Russell Croweの主演作を観てきた。

イスラム過激派が巣くうフィリピン沖の島で極秘任務にあたっていた米軍特殊部隊デルタフォースが、ゲリラの襲撃に遭う。その中で孤立した隊員が、無人戦闘機MQ-9 Reaperで後方支援する操縦官の助けを得ながら、脱出しようとするお話。

となると、肉体派 Russell Croweが現場で悪戦苦闘するのを、頭脳派の若手がモニタールームから支援するという構図を思い浮かべるが、映画はその逆。現場に取り残されたのは、実戦経験に乏しい若手(Liam Hemsworth)。モニタールームで後方支援するのが、ベテラン Russell Crowe。この逆転の配役が効いている。

戦場アクション映画として、過不足なく面白い。戦場で逞しくなっていくLiam Hemsworthと、頑固で責任感が強く人情に厚いRussell Croweの、無線を介しただけの絆も熱い。

そして、それ以上に興味深いのが、無人戦闘機を駆使した現代戦の描写だ。Russel Croweが指示を出しているのは、現場から遠く離れたラスヴェガスのオペレーション・ルーム。周囲の同僚達はテレビのバスケットボールの試合中継に夢中だし、彼も、任務を解かれると、妻のためにスーパーで買い物をする。一方、現場の兵士は、ジャングルを行軍し、銃弾をくぐり抜け、敵の拷問を受け、汗と血にまみれている。それでも、威力を発揮するのは、遠隔地から操作するミサイルの圧倒的な殺傷能力だ。

テクノロジーが発達すれば、戦争はクリーンなものになるという幻想へのアンチテーゼと、痛快アクションが両立した佳作だ。


「建物公開2025 時を紡ぐ館」 @ 東京都庭園美術館25.8.22

東京都庭園美術館毎年、楽しみにしている、東京都庭園美術館の建物公開。今年は6年ぶりの夏の開催。そのため、昼間の暑さを避け、金曜日の「サマーナイトミュージアム2025」(21時まで開館)に出かけてきた。

が、考えることは皆同じ。しかも、庭園では「アール・デコ博覧会開催100周年記念 夜会 ~ART DECO NIGHT GARDEN PARTY~」が開催されていて、これまで、この美術館で体験したことが無いほどの大混雑。夜会の案内には、「ドレスコード:1920~30年代のモダンボーイ・モダンガールの装い」と記載されているため、(いささかコスプレめいた)モボ、モガも多数。

今年のテーマは、旧朝香宮邸における建築空間の「機能の変遷」。つまり、
・1933年、朝香宮家の邸宅とし竣工し、
・1947年から、吉田茂が外相公邸、首相公邸として使用し、
・1955年から、国賓・公賓来日の際の迎賓館として使用され、
・1974年からは、プリンスホテルの本社として使用された後、
・1981年12月に東京都に売却され、
・1983年、美術館として開館
というこの建物の記憶を、時代ごとの縁の作品や写真、映像資料を通して、紐解くという趣向。

東京都庭園美術館ということで、展示されているのは、美術品よりも、資料的な物が多い。

朝香宮邸の設計者、権藤要吉がパリの「アール・デコ博覧会」を視察した渡航アルバムなど、興味深い物、多し。

東京都庭園美術館建物公開の度に探してしまう「三羽揃いのペリカン」(本当はペンギン)像。今回も、見つけられて嬉しい。

東京都庭園美術館食卓がテーブル・セッティングされているのも、建物公開ならでは。

東京都庭園美術館吉田茂は、ここで重要書類にサインをしていたのだろうか。重みがある雰囲気の部屋が再現されている一方、

東京都庭園美術館 東京都庭園美術館「ワンワン宰相」と呼ばれた吉田茂の愛犬の写真も、たっぷり。

東京都庭園美術館日なたの印象が強い「ウィンターガーデン」に、夕闇が濃くなってきた時間に入るのも新鮮だ。ただし、一度に入れる人数が制限されているので、入室できるまで、大行列に並ぶ必要がある。

東京都庭園美術館建物を外から見ると、モボ・モガのコスプレ効果もあって、本当に舞踏会が開催されているような雰囲気。

東京都庭園美術館庭の「夜会」では、華やかな装いの人達が、バンド演奏やキッチンカーの飲食を楽しんでいる。が、モダンボーイとは無縁の私は、そちらは素通りで撤退。

日が暮れても治まらない暑さと人混みは辛くもあったが、非日常的な夏の夜。いつもとは違う表情を見せる庭園美術館を堪能。


”Ballerina”25.8.23

TOHOシネマズ日比谷Keanu Reeves主演のヒット・シリーズ
John Wick
John Wick: Chapter 2
John Wick: Chapter 3
John Wick: Chapter 4
に続く、スピンアウト作を観てきた。

今回の主役はAna de Armas。”Knives Out”や、”No Time to Die”で、とても印象的だったので、期待大である。

時系列としては、"Chapter 3"と"Chapter 4"の間。謎の組織に父親を殺され、表向きはバレエ団、実は殺し屋集団に引き取られて育ったAna de Armasが、父の復讐に立ち上がるというお話。謎の組織との激しい戦いの中、殺し屋社会の掟を破った彼女の前に、Keanu Reeves演じるJohn Wickも立ちはだかる。

作品を重ねる毎に、荒唐無稽さを拡大してきた”John Wick”シリーズ。スピンアウトで、多少は現実寄りに戻すのかと思いきや、本作でも、殺し屋こそがこの世の中心という大風呂敷が全開。しかし、124分間、アクションに次ぐアクションのストーリーは、中だるみすること無く、(色々と滅茶苦茶な設定なのに)説得力すら持って突き進む。

その牽引力は、このシリーズの特色である、アイディアに富みながらも、見栄えだけで無く、確実に相手を殺すことを徹底したハードなアクションだ。大量の手榴弾を使ったり、火炎放射器とアレを正面対決させたり、スケート靴を凶器にしたり、もう、皆の心の奥にいる中学生男子が妄想するようなヴァイオレンスを、出し惜しみ無し。

Ana de Armasは、綺麗で愛嬌もあってスタイルも良いのに、そういったノイズになりそうなものは、一切封印。まだまだ新人ながら、発展途上のポテンシャルに満ちた殺し屋を、クールに演じきっている。良い俳優だなぁ。もちろん、脇に回っても存在感たっぷりのKeanu Reevesも見事。

という訳で、見応えのあるスピンアウト作だった。唯一、残念だったのは、本シリーズの特徴だった「犬」の存在感が希薄なところか。

あと、エンド・クレジットで流れる、Evanescenceの"Fight Like A Girl (feat. K.Flay) "は名曲だな。



庭園美術館の草むらから聞こえてきた虫の声に、確かに秋は近づいていると感じた、今日この頃です。